免震建物の引き抜き面圧との格闘 その3
これまでに,免震材料の鉛直剛性の非線形性を考慮した面圧検討の手法を,その1〜2とお話ししてきましたが,今年最初に免震案件の仕事を戴いたお客様からの情報で,多少手間が省けることが判明しましたので,今日はその3としてお話しします。
その前に,やりたいことを一度おさらいしておきましょう。
免震材料(いまだに違和感のある言葉ですが)の鉛直剛性の非線形性を図にすると以下のようになります。
引き抜き時の鉛直剛性が圧縮時の1/10〜1/20に低下するのは,短期(地震時)軸力が負に転じた瞬間ですが,上下動も考慮しなければなりませんので,そこが少々面倒なところです。
動/静・転倒モーメント比率に応じて最大ステップ数で解析終了時をコントロールしたSS3データを,上下動の押し込み側と引き抜き側の二つ用意する必要があるうえに,弾性解析よりも長い解析時間を要するからです。
たとえば,レベル2の特性変動(正側)と余裕度検討レベルという2ケースの面圧を検討するには,それぞれの上下動の押し込み側と引き抜き側のデータが要るので4つ,45度方向を加えれば計8つのSS3データを用意して、すべて非線形応力解析を行うことになります。
だから,ミスを少なくする意味からも,少しでも検討に要する手順を簡略化したいので,今回の情報は朗報でした。
今回,私がお客様から得た情報によれば,SS3における支点の鉛直剛性の非線形性の考慮が,保有水平耐力計算時だけでなく,通常の地震荷重時の応力解析でも可能だというものです。
これにはまったく気付きませんでした。
支点の鉛直剛性の非線形性に関するデータは,保有水平耐力計算に関するものですので,「一次設計では働かないはず」という私の誤った思い込みだったようです。
これにより何が変わるかといえば,支点反力の確認が「浮き上がりのチェック」だけで済むことです。
たったこれだけですが,保有水平耐力結果としての支点反力は,応力結果の一部として出力されますので,欲しい情報を抽出するのが面倒であり間違いの元にもなりかねないからです。
「浮き上がりのチェック」なら,まさに欲しい情報だけが得られます。
これをCSVに掃き出して貼り付ければ面圧検討結果が更新されるように用意しておけば,SS3による非線形応力解析の時間さえ待てば,後は貼り付けるだけですからね。
それでは,その2で紹介した方法に加筆・修正した手順を示します。
1.支点の鉛直バネ(初期剛性)には免震材料の圧縮剛性を与える
2.保有水平耐力計算は,許容応力度設計時の外力を5倍した水平荷重になるので「推定崩壊荷重の倍率」は0.2とする
3.「支点の考慮」の浮き上がりを考慮する
4.「ひび割れ耐力関連-支点ひび割れ耐力」で浮き上がり耐力に微少値(0では浮き上がりを考慮できないため)を与え,αyを負値入力(初期剛性に対する比率を与えるモードになる)する。
(例:1/10なら0.1,1/15なら0.0666を与える)。
5.「終局耐力関連-支点耐力」は,Bi-Linear型としたいので大きな値を与える。
6.静/動O.T.M比率を「最大ステップ数」でコントロールするので,荷重増分は「等差級数分割」ではなく必ず「等分割」にする
7.「推定崩壊荷重までのステップ数」は200ステップ(100の方がわかり易いが精度に難あり→200を推奨)とする
8.架構設計用の基本モデルの他に,上下動正側と負側のSS3データを用意する。
9.上下動正側と負側のデータに上下動による変動軸力を与える(本来は全節点が対象になるが,免震層に着目すれば第一層の節点に対する「節点補正重量」の入力で特に問題はないものと考える)。
10.静/動O.T.M比率を「推定崩壊荷重までのステップ数」で与えた200に乗じた値を「最大ステップ数」とする。
(例:O.T.M比率=0.785ならば,0.785×200=157ステップを「最大ステップ」とする)
11.「浮き上がりのチェック」ではなく,保有水平耐力時の支点反力を用いて面圧を検討する。
その2との違いは,荷重増分に関する情報を与える場所が「14.2.1.4 荷重増分」の項ではなく,「2.3.11 短期地震荷重時の解析方向」において「<2>弾塑性解析」を選択したうえで,「2.6 荷重増分条件」での入力となることです。
要するに,手順2が不要になり,手順6と7の入力が「2.6 荷重増分条件」に移るだけです。
これで,「浮き上がりのチェック」で得られる反力結果での面圧検討が可能になります。
実は,手順5も不要だということも判明しました。私はTri-Leaner型にしか出来ないと考えていましたが,手順5を省くとBi-Leaner型になることが確認できました。
手順4で与える浮き上がり耐力の下限値が1kNなので,折れ点の軸力が-1kNとなりますが,まさに上図のイメージ通りの解析が可能となります。
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免震材料(いまだに違和感のある言葉ですが)の鉛直剛性の非線形性を図にすると以下のようになります。
引き抜き時の鉛直剛性が圧縮時の1/10〜1/20に低下するのは,短期(地震時)軸力が負に転じた瞬間ですが,上下動も考慮しなければなりませんので,そこが少々面倒なところです。
動/静・転倒モーメント比率に応じて最大ステップ数で解析終了時をコントロールしたSS3データを,上下動の押し込み側と引き抜き側の二つ用意する必要があるうえに,弾性解析よりも長い解析時間を要するからです。
たとえば,レベル2の特性変動(正側)と余裕度検討レベルという2ケースの面圧を検討するには,それぞれの上下動の押し込み側と引き抜き側のデータが要るので4つ,45度方向を加えれば計8つのSS3データを用意して、すべて非線形応力解析を行うことになります。
だから,ミスを少なくする意味からも,少しでも検討に要する手順を簡略化したいので,今回の情報は朗報でした。
今回,私がお客様から得た情報によれば,SS3における支点の鉛直剛性の非線形性の考慮が,保有水平耐力計算時だけでなく,通常の地震荷重時の応力解析でも可能だというものです。
これにはまったく気付きませんでした。
支点の鉛直剛性の非線形性に関するデータは,保有水平耐力計算に関するものですので,「一次設計では働かないはず」という私の誤った思い込みだったようです。
これにより何が変わるかといえば,支点反力の確認が「浮き上がりのチェック」だけで済むことです。
たったこれだけですが,保有水平耐力結果としての支点反力は,応力結果の一部として出力されますので,欲しい情報を抽出するのが面倒であり間違いの元にもなりかねないからです。
「浮き上がりのチェック」なら,まさに欲しい情報だけが得られます。
これをCSVに掃き出して貼り付ければ面圧検討結果が更新されるように用意しておけば,SS3による非線形応力解析の時間さえ待てば,後は貼り付けるだけですからね。
それでは,その2で紹介した方法に加筆・修正した手順を示します。
1.支点の鉛直バネ(初期剛性)には免震材料の圧縮剛性を与える
3.「支点の考慮」の浮き上がりを考慮する
4.「ひび割れ耐力関連-支点ひび割れ耐力」で浮き上がり耐力に微少値(0では浮き上がりを考慮できないため)を与え,αyを負値入力(初期剛性に対する比率を与えるモードになる)する。
(例:1/10なら0.1,1/15なら0.0666を与える)。
6.静/動O.T.M比率を「最大ステップ数」でコントロールするので,荷重増分は「等差級数分割」ではなく必ず「等分割」にする
7.「推定崩壊荷重までのステップ数」は200ステップ(100の方がわかり易いが精度に難あり→200を推奨)とする
8.架構設計用の基本モデルの他に,上下動正側と負側のSS3データを用意する。
9.上下動正側と負側のデータに上下動による変動軸力を与える(本来は全節点が対象になるが,免震層に着目すれば第一層の節点に対する「節点補正重量」の入力で特に問題はないものと考える)。
10.静/動O.T.M比率を「推定崩壊荷重までのステップ数」で与えた200に乗じた値を「最大ステップ数」とする。
(例:O.T.M比率=0.785ならば,0.785×200=157ステップを「最大ステップ」とする)
その2との違いは,荷重増分に関する情報を与える場所が「14.2.1.4 荷重増分」の項ではなく,「2.3.11 短期地震荷重時の解析方向」において「<2>弾塑性解析」を選択したうえで,「2.6 荷重増分条件」での入力となることです。
要するに,手順2が不要になり,手順6と7の入力が「2.6 荷重増分条件」に移るだけです。
これで,「浮き上がりのチェック」で得られる反力結果での面圧検討が可能になります。
実は,手順5も不要だということも判明しました。私はTri-Leaner型にしか出来ないと考えていましたが,手順5を省くとBi-Leaner型になることが確認できました。
手順4で与える浮き上がり耐力の下限値が1kNなので,折れ点の軸力が-1kNとなりますが,まさに上図のイメージ通りの解析が可能となります。
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